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企業長あいさつ


新年度のごあいさつ

企業長・院長 宮地 正彦

令和5年度は開院10周年の節目の年です。平成25年5月1日の開院から10年が経ち、紆余曲折はありましたが、地域の皆さまに支えられながら、病院は着実に成長し、地域医療に大いに貢献できるようになりました。
開院当初は他の病院に追いつくこと、最近の5年間は統合したことのモデルケースになることが目標でした。次の10年はファーストペンギンになることを恐れず、新しい試みをしていこうと考えています。

令和4年度は大きく変革した年でした。コロナ禍では多くのことが分断されましたが、そのような時にこそ、連携することに活路を見出しました。ある人に教えていただいた言葉がそれをよく表しています。『人はつながるだけで力を得ることがある。絶望も諦観も、孤独の沼からあふれ出してくる。手を取り合うだけで、にわかに歩む道先が見えてくることがある。理屈も知恵も哲学も、皆あとからついてくる。』(夏川草介「新章神様のカルテ」より)院内でも連携を高め、さらに病院が逼迫した中であっても院外に活動を広げることで、活動の輪が広がり、分断されていたものがつながり、大きな成果を上げることができました。2年半の長きにわたり院内クラスター感染を起こさなかったのですが、第7波で初めて院内クラスター感染を経験しました。周りの方々に助けられ、一般診療、救急診療を維持し続けることができました。この連携の力ががん診療、救急診療、教育の強化により大きな成果につながりました。

中東遠圏域ではがん患者の30%ほどが他の圏域で治療されています。消化器がんの患者さまの診療を行っていた私としては、ぜひ中東遠圏域でがん患者さまを治したいと強く思いました。がん診療を強化していく一環として、『地域がん診療連携拠点病院』の指定を取りたいと考え、この5年間に緩和ケア外来、がん相談支援センター、がん・緩和ケア支援センターの開設などを行い、がん患者さまに多種のサポートを提供できる体制ができました。このことが評価され、中東遠圏域で磐田市立総合病院に次いで、同一圏域内で複数病院の指定を受けることが極めて難しい『地域がん診療連携拠点病院』に令和5年4月に指定されました。
また年内を目指して、緩和ケア病棟を開設する予定です。緩和ケア病棟は病院と在宅医療をつなぐことにも役立つと考えています。在宅医療と連携した、より質の高い、患者さまに寄り添った緩和ケア医療を行っていくつもりです。また3年後には最新の放射線治療器を導入します。多くのがん種に対して短期間で、副作用が少なく体に優しい、保険診療でコストも高くない診療を提供できます。

当院が統合してできたことで断らない救急医療が実践できています。救急医が一時的に減少しましたが、昨年度から5名体制となり、ドクターカーの運用を始めることができました。救急医と看護師が現場におもむき、早期に医療介入できるようになり、救命率の向上につながっています。

開院後も続く医師不足を解消するために当院において若い優秀な医師を育てることが重要だと考え、全職員が初期研修医の教育に熱意を注いでいます。この結果、当院で働くことを希望する医学生が増加し、5年間連続で14人の初期研修医を採用することができました。全国規模の初期研修医に対する能力試験において、当院の初期研修医は642病院中15位と素晴らしい成績を収めました。彼らが当院の医療の質を底上げしています。

当院は医師不足以上に薬剤師不足が深刻であり、負担軽減が急務となっています。令和5年5月1日に病院の玄関前に新たな薬局が開設されました。この薬局は365日、朝の8時30分から夜の11時まで開いています。このことにより、時間外の患者さまへの調剤を薬局が行い、救急患者さまへの対応も可能となったことから、当院の薬剤師の負担は軽減されます。また当院の薬剤師が行っている薬の確認を院外の薬局で行う仕組を新たに作ったことで安全性が高まり、説明、相談業務も軽減され、病院内で薬剤師が行うべきこと、したいことができる環境になりました。当院で働きたいと考える薬剤師が増加することを期待しています。災害時においては薬剤の備蓄基地として大きな役割を果たすと考えます。このような新しいタイプの敷地内薬局を日本で初めて導入したことで、今後も地域の薬剤師、薬局の方々との連携を強化し、地域での薬剤業務の安全性、利便性の向上に努めていきたいと思います。

今後の医療は疾病を予防すること、早期に異常を見つけて対応することが大切だと考えます。それゆえに人間ドックでの定期的な健診が重要です。受診者さまの利便性を高めるために健診時間が短くなるように様々な工夫をすることで従来4時間以上かかっていた健診が現在は2時間ほどで終了できるようになりました。画像系の検査を全て二重チェックとすることで健診の質が高まりました。異常な病態、対処法の説明を二次元コードやアプリを利用し、受診者さまがいつでも見られるようにしています。がんの検診も強化し、早期がんの発見件数が増加し、早期の根治治療に結びついています。現在行っているアンケートによるレビー小体型認知症の早期発見・早期治療に加え、アプリを利用してうつ症の自己診断・自己コントロールを行い、自殺願望の抑制にも繋げていきたいと考えています。

今後も病院が統合し、新たに得ることのできた能力を生かして、ファーストペンギンになることを恐れず、多くの改革を積極的に進め、地域医療の安全性、質の向上に努めていきたいと思います。
地域の皆さまからの温かいご支援や医療機関の皆さまの励ましが我々に勇気を与えてくれました。この場をお借りして心からお礼を申し上げます。
これからも地域住民の皆さま、そして医療関係者の皆さまに支えられながら、職員一同、全力を尽くしてまいります。引き続き、ご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
令和5年4月1日
企業長・院長 宮地 正彦